会長挨拶
この度、ITS Japan会長を拝命致しました、山本でございます。日頃より会員の皆様をはじめ多くの皆様のITS Japanの活動へのご支援・ご協力に対して心より感謝を申し上げます。
社会の変化
日本のITSはスタートしてから約30年の節目の時期を迎えようとしていますが、30年前と今とでは日本の社会は大きく変化しています。
例えばこの30年間で出生率は約35%減少し、65歳以上の高齢者人口については約2倍となり、これは総人口の29%にも及び、少子高齢化社会の構図が色濃くなりました。
そしてこれを背景とした日本の財政構造についても、社会保障費が国の歳出の1/3まで占めるようになり、30年前の2倍になっています。
その影響もあり地方交付税交付金の割合は減少しています。また、最近の10年間を振り返りますと、交通インフラの老朽化に加え、カーボンニュートラル、自然災害、COVID19への対応など、重要課題が山積し、国の財政負担も大きくなっています。
ITS・ITS Japanの役割変化
このような社会の変化にともない、ITSが「道路・交通課題のソリューション普及」という目的から、ITSの技術・サービスを活用した「日本の社会課題解決への貢献」 に期待や役割が変わってきています。
ここ数年の日本国内の動きを見てみますと、企業と地方自治体が連携し新しいモビリティサービスの実証実験が各地でトライされていますが、補助金が尽きたら終了という状況が少なからずございます。この結果、住民の皆様にご迷惑やご不便をお掛けしてしまうこともあると思います。これが今の、MaaSの事業もしくは地方創生を考える上でのITSの難しい面だと感じております。
ニュートラルな公共の立場で考え、動ける、ITS Japanが一般企業と違ってできること、役割は何かと考えると、いろいろな企業がやってダメだったことをしっかり整理をして、その中でどうしたらそれが持続可能になるかを、政策に反映できるようなソリューションとして提案することだと考えております。
また、民間企業個社だけでは対応できない各種社会課題解決に向け、自動車工業会、日本道路交通情報センター、VICSセンターなどの関連団体とも協力しあい、皆が力を合わせて進めていくべきプロジェクトのファシリテーターとしても汗を掻いて参ります。
日本のITSがこれから考えていくべきこと
この30年で国内の乗用車の保有台数は約1.5倍に増加する中、交通事故死者数は約1/4に減少しています(1993年 約11,000人→2022年 2,600人)。新車のADASの装着台数拡大に加え、VICS/ETCやITS無線を始めとするITSインフラやHELPNETなどの各種サービスが交通事故数、死亡者数減少にも多少ながら貢献ができてきていると思っております。ただし、現状に甘んじることなく、ITS無線のさらなる普及や、高齢者の支援のための新たなサービスの提案など、ITSとして交通事故低減のためにやるべきことはまだあると思います。
また、国内のHEV、PHEV、BEVなどの電動車の新車販売比率は22年度では52%台と増加してきておりますが、車単体の環境対応だけでなく、コネクティッドやデジタル化の新しい技術を取り入れながら、渋滞回避や公共交通との連携による移動の効率化、物流の効率化など、カーボンニュートラルへも貢献して参りたいと思います。
さらに、ITS Japanの強みである地方自治体とのネットワークも活かして、「安心・安全なモビリティ社会の実現」、「日本らしいカーボンニュートラルへの貢献」、そして「移動の自由や移動の楽しさ」にも目を向けて参ります。
どんどん変わり続ける社会、先が読めない社会だからこそ、ITS-Japanは、活動範囲に制限を設けず、様々なことに柔軟に取り組んで参ります。
ITS Japanは、ITS技術の進化を通して、これからも次世代社会を構築すべく関係者の皆さまとともに努力して行く所存です。今後とも皆様方のご支援ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
ITS Japan 会長
山本 圭司