第12回地域ITS推進団体連絡会(2016年2月9日)
「第 12 回 ITS 地域 推進団体会」開催結果報告
~これからのITS 「地域を支えるしくみとITSの活かし方」~
ITS地域交流会と地域ITS推進団体連絡会について
地域ITSの活動では、地域の視点で交通課題・生活課題を解決するための連携強化のため、地域間での情報流通の支援やITS Japanから情報提供を行う「ITS地域交流会」を開催し、地域の方々の活動に役立てていただくと共に、地域(フィールド)の状況の把握に努めている。
また、地域でITSの活用によって課題解決を図るべく活動している地域ITS推進団体と「地域ITS推進団体連絡会」を開催して、「ITS地域交流会」等で得られた地域の情報を共有し、地域間が相互に交流、意見交換を行っている。今回は、2月9日に開催した「地域ITS推進団体連絡会」について報告する。
第12回 地域ITS推進団体連絡会の開催結果報告
2月9日(火)にメルパルク東京に於いて、地域ITS推進団体(ITS Japan特別会員)および、ITS関連省庁にお集まりいただき、「これからのITS ~地域を支えるしくみとITSの活かし方~」をテーマに、第12回地域ITS推進団体連絡会を開催した。
ITS地域交流会を始めて5年の節目の年であり、次期中期計画の策定の年でもある今回は、①これまでの地域交流会で得られた情報を俯瞰し、②現在の社会のしくみ(新しい公共・官民協働・オープンガバメントへ)やITS/ICTを取り巻く環境の変化を認識し、③ITS/ICT活用対象の変化(交通領域から社会課題、交通とまちづくり領域へ)と、活動のやり方の変化(世の中の官民協働、自助、共助、互助への流れに呼応)を考える内容で報告と討議を行った。
開催概要
◆開催日時場所 :
2月9日 13:00~17:00 メルパルク東京 孔雀の間
◆参加団体 :
北海道ITS推進フォーラム(1名)、青森ITSクラブ(2名)、横浜市(2名)、ふじのくに静岡ITS 推進協議会(2名)、愛知県ITS推進協議会(2名)、豊田市交通まちづくり推進協議会(1名)、中国ITS研究会(2名)、九州経済連合会(1名)
◆参加省庁 :
警察庁交通企画課(1名)、総務省移動通信課(1名)、経産省自動車課(1名)、国交省道路局ITS推進室(1名)
◆開催テーマ :
これからのITS ~地域を支えるしくみとITSの活かし方~
開催結果報告
1) 開会挨拶 ~地域ITSを取り巻く動き~
ITS Japanより、過去5年間のITS地域交流会を通して理解された具体的な課題と、日本および世界のITSを取り巻く環境の変化を報告した。
1. ITS Japanの地域ITS活動の位置付け
2. 地域ITSの目指す姿と、その課題認識
3. 地方創生と地域ITS(国内の潮流)
4. Mobility as a Serviceの潮流(世界の潮流)
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2)2015年度の地域のITSの動向
ITS Japanより、今年度の地域交流会の活動、ITSチャレンジの活動について報告した。
開催日 |
会議名(場所) |
テーマ |
参加者 |
地域選定のねらい |
09/17 |
第8回ITS地域交流会in中国地方(広島市) |
交通の利便性向上による街や地域の活性化を考える |
中国地方の自治体、事業者、研究者、中国ITS研究会会員 |
中山間地域で過疎地が多く、小さな拠点づくりや、高齢者の移動や交通課題への先行した取組み事例を知る。 |
11/18 |
第9回ITS地域交流会in北海道(札幌市) |
街や地域が持続的に発展・活性化する交通まちづくりを考える |
道内市町村、北海道庁、国、北海道ITS推進フォーラム会員 |
圏域が広大で、計画的に開発された歴史もあり、移動や交通の課題と解決への取組みに本州との違いを知る。 |
08/05 |
ITSチャレンジ2015 WS#1 |
シビックテクノロジーとオープンデータから始まる地域イノベーション |
ITSJapan会員、一般募集による参加者 |
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01/26 |
ITSチャレンジ 2015 WS#2 |
オープンデータとSNSが地域の交通課題、地域活性化にどう活用できるか? |
ITSJapan会員、一般募集による参加者 |
地域ITS推進団体が、地域での活動、動向について報告した。
団体 |
報告内容 |
北海道ITS推進フォーラム |
ITSの推進に向けた講演会・地域ITS研究会の開催 |
特定非営利活動法人 青森ITSクラブ |
大雪時等の移動前に役立つ全国初の新サービスに関する取り組み(交通シビアリティ指標) |
横浜市(温暖化対策統括本部) |
超小型電気自動車を活用したワンウェイ型カーシェアリングの実施 |
ふじのくに静岡ITS推進協議会 |
インターネットを活用した混雑情報の提供、伊豆スカイライン割引による県道渋滞緩和対策 |
愛知県ITS推進協議会 |
「あいちITSワールド2015」の開催 |
豊田市交通まちづくり推進協議会 |
豊田市 立ち乗り型パーソナルモビリティ実証実験 |
中国ITS研究会(中国経済連合会) |
ITSに関わる講演会・第28回中国ITS研究会 |
一般社団法人 九州経済連合会 |
「公共交通へのICT活用方策等」検討WG |
3) ディスカッション ~地域を支えるしくみとITSの活かし方~
ITS Japanから、ITSが解決する課題の広がりや、社会のしくみの変化にともない、これからはITSは交通の課題だけを解決するのではなく社会的課題の解決も目指すように視点を変えていく必要があること、社会のしくみがオープンガバメントや官民協働、新しい公共のような形態に変化してきておりITS関係者の活動スキームも変える必要があること、を示して、参加者と議論した。
議論のきっかけとして、社会的課題の事例(事例1:オールドニュータウンの高齢者の移動、事例2:中山間地域の人と物の移動、事例3:都心の交通弱者の移動)を挙げた。主な意見を記す。
-1 市内には中山間地と市域の両方があるので類似の課題がある。将来的にはコミュニティ内での共助的な移動のしくみを検討しているが、今の法律上共助のドライバーに対価を払うことが難しく基本的にはボランティア輸送の形態になる。国と相談しながら進めていく。
-2 今一番の社会課題は高齢者のクルマの運転の問題。高齢者の足となる公共交通が無いという地方都市が殆どと思う。制限時速50kmの道で30kmしか出さない高齢者の車が増えており渋滞になるし他のドライバーのストレスが増える。病院の駐車場でも高齢者はきちんとクルマを駐車するのに10分かかり渋滞を引き起こしている。
-3 小型EVによるカーシェアリングは、都心部だけでなく、郊外の高齢化したオールドニュータウンでも実証が行なわれている。鉄道駅からはバスでしかいけず、規模は大きく世帯も高齢化しているがバス便を増やすのは難しいためそれを補完する形でPMVやカーシェアリングが使えないかという事で実証している。
-4 PMVはまだカテゴリ化されていないジャンルのクルマのため事前の運転講習が必要で「すぐ乗れない」という問題がある。また、シェアリングシステムの貸し出しシステムを使うにはITスキルが必要で高齢者にはハードルとなる。交通系ICカードで利用できるようにすれば一枚のカードで精算もでき、かざせば乗れる。そうなれば高齢者も使いやすくなるのではないか。
-5 シェアードモビリティは欧州ではものすごい勢いで取り上げられてきているしアメリカもそうなってきているが日本では定着していない。何が違うのだろうか?
・ラストワンマイル対策と言ってきたが、そもそも家を出るときに近くに借りれるクルマがないと自家用車を使ってそのまま自家用車で目的地まで行ってしまう。家の近所のコンビニ等にステーションを確保するなどファーストワンマイルの利用の工夫が必要。
・日本人は使いたいときにすぐ使える車がないと不安になる性格かもしれない。外国人は比較をして安いと理解すると直ぐに交通行動を変えるが、日本人は分っていてもなかなか行動を変えないように思う。
・海外では圧倒的に利用できるクルマの台数、規模が違う。法的なものも違う。海外では路上での乗り捨てができる。日本では路上駐車は認められていないし乗り捨てできない。
・ワンウェイ型では偏ったクルマをステーションに戻したり、充電器のある拠点まで移動させるための人件費コストがかかり事業の収支を圧迫している。
-6 ITS Japanと参加団体との新しい連携や取り組みについて要望やアイディアはないか?
・地方創生が言うところの、ひと、まち、しごと、づくりのうち、街づくりには一定の寄与が出来ているが、人づくりと仕事づくりの領域はなかなかできない。ITS Japanには色々なパイプなり人脈があるので人づくりの面で何か新しい連携ができないか。
4) 今後の地域ITSの取組みについて (ITS Japanより)
重要なのは現場を意識すること。具体的なターゲット、現場をしっかり持って、地域の人といっしょになって事例を作っていくような活動を進めていきたい。