第10回ITS地域交流会in山陰地方2016(2016年12月8日)
【第10回ITS地域交流会in山陰地方2016開催報告】
~中山間地域の暮らしにおける交通や移動の課題を考える~
2016年12月8日(木)一般財団法人 米子市文化財団 米子市文化ホール にて開催
「ITS地域交流会」は、各地域における移動や交通課題についての意見交換や課題検討を行なう場であり、参加された地域間での情報共有の支援や、ITS Japanからの情報提供を地域活動に役立てていただくことが主な目的です。またITS Japanとしても現場の状況を把握することによって、ITSへの提言や会員への情報提供につなげていく活動の一つです。
今回は、地域の交通課題の解決に関心のある鳥取県・島根県の自治体担当者、ICT/ITSシステム、オープンデータやビッグデータ等のまちづくりへの活用を考えている地域の事業者、研究者が集まり、講演や事例紹介、参加者同士のグループディスカッション、登壇者によるパネルディスカッションを行いました。
1.実施概要
テーマ 中山間地域の暮らしにおける交通や移動の課題を考える
開催日時 2016年12月8日(木) 13 : 00~17 : 30
開催場所 一般財団法人 米子市文化財団 米子市文化ホール イベントホール
主催 特定非営利活動法人 ITS Japan
共催 鳥取大学持続的過疎社会形成研究プロジェクト
後援 鳥取県、島根県、しまねソフト研究開発センター・島根県IoT推進ラボ
参加人数 : 鳥取県庁・島根県庁(10名)、鳥取県島根県の市町村(11名)、
中国地方整備局(11名)、地元企業、団体(16名)、大学(6名)、登壇者(5名)
プログラム:配布プログラム
■第Ⅰ部 講演/取り組み紹介 13:15– 15:20
・基調講演
「少人口地域における生活サービスの再構築に向けて」
鳥取大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 教授 谷本 圭志
・取り組み紹介
「中山間地域における住民主体の取り組みの背景と課題」
公立鳥取環境大学 経営学部 准教授 倉持 裕彌
「雲南市の公共交通の取組み」
島根県 雲南市 政策企画部 地域振興課 GL 野々村 達志
「市民協働の取組み(塩レポ)と情報の見える化」
長野県 塩尻市 企画政策部 情報政策課 課長 金子 春雄
「地方部のICTを活用した交通関連の取り組み」
株式会社 バイタルリード 代表取締役 森山 昌幸
■第Ⅱ部 ディスカッション 15:40 – 17:20
~地域の元気に役立つ交通を考える~
進行、モデレータ
鳥取大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 教授 谷本 圭志
グループディスカッション(前半)
※ 講演内容や取組み、地域の交通課題について、参加者同士で議論
パネルディスカッション、全体ディスカッション(後半)
※ 登壇者や他の参加者との討議、質疑応答
2.講演概要
■基調講演:谷本 圭志 教授(鳥取大学大学院)
“人口減少をどう受け入れるか”という課題に対して、中山間地域の移動販売業者の取組事例を紹介いただきました。この業者は人口減少により販売減少しており、継続が難しい状態でした。しかし、業態を見ると販売だけでなく各家庭への荷物の運搬等をすることにより、各家庭の状況把握を行っています。これらの活動を福祉とみなし、行政が支援することにより、継続が実現しました。このような社会のしくみ・サービスを抜本的に変える必要性等についてお話をいただきました。
■取り組み紹介1:倉持 裕彌 准教授(鳥取環境大学)
鳥取県伯耆町添谷地区の地域づくりに参加し、人のつながりが深くなる長所と地域活性化の取組みを持続するための経済的拡大の必要性という課題の話、人口が少ない村での移動販売と既存店舗の競合の課題、学生がもし中山間地域に住む場合に重視することはスクールバスなどの公共交通であること、などの話題の提供をいただきました。
■取り組み紹介2: 野々村 達志GL(島根県雲南市政策企画部)
市の公共交通として、広域バス、地域バス、デマンド型バス・タクシーを運行することにより、バス停から400m離れた交通空白地域を解消した活動や、これらの公助による交通に加え、地域内の短い移動は共助の乗り合いで今後解消しようとしていることについて紹介いただきました。
■取り組み紹介3: 金子 春雄 課長(長野県 塩尻市 企画政策部 情報政策課)
長野県塩尻市では、まず児童見守りシステムを構築するため、アドホックネットワークを整備し、この自営ネットワーク上にセンサーを載せ、バスロケーションシステム・土砂崩れの感知・鳥獣の監視等の情報見える化を実現している活動の紹介などの話とともに、ネパールでこれらのセンサーネットワーク利用をし、登山者追跡などのシステムを海外展開していることについての話も頂きました。
■取り組み紹介4: 森山 昌幸 代表取締役(株式会社 バイタルリード)
森山氏からは、地図上に地域の情報を追加し見える化することにより様々な分析ができること、その事例として乗用車のプローブデータによる渋滞対策、独自の乗降者カウンターをバスに搭載することによるバス路線の適正化、などの対策事例を紹介いただききました。
3.グループディスカッションおよびパネルディスカッション概要
参加者と登壇者が6つのグループに分かれて、討議を行ないました。グループ討議で出た意見や質問をもとに、谷本教授にモデレータとなっていただき、登壇者をパネラーとしてパネルディスカッションを行いました。主な意見を以下に記します。
- サービス・仕組みは作れても仕組みを運営する担い 手の確保が問題。
- 法律の専門家が少なく、ビックデータの解析は個人情報の関係などで進まない。
- 積極的な集落とそうでない集落の差はほとんどなく、リーダの存在が重要。
- 各自治体の成果を紹介できる会をまた開きたい。
ITS Japanでは本交流会が、地域拠点の活性化、まちづくりに向けた交通や移動の課題、求められる施策、それらへのICT/ITSの適用等の議論を通じて、産官学による今後の地域のアクションを考える一助になればと考え、今後も継続してまいります。
《 参考資料紹介 》