第9回ITS地域交流会 in 北海道2015(2015年11月17日)

【第9回 ITS地域交流会 in 北海道2015 開催報告】
~街や地域が持続的に発展・活性化する交通まちづくりを考える~

2015年11月17日に、札幌市において“ITS地域交流会 in 北海道2015”を開催した。

1.実施概要

 日本の多くの地方自治体では、医療、介護、福祉等の負担が増加する中で、コミュニティ復活、公共交通維持、地元産業活性化など複合的な課題解決が求められている。先進的な地域では、地元産業、地域コミュニティ、自治体などが連携して、交通利便性確保だけでなく地元経済の好循環と地域活性化につながるITS、ICT利活用を含めた取組みが進められている。

 9回目となる今回は、開発の歴史や気候風土が本州と異なる北海道で、「街や地域が持続的に発展・活性化する交通まちづくりを考える」をテーマに、道内市町村のまちづくりや都市・交通政策等の担当者と、北海道庁や国、北海道ITS推進フォーラムのメンバーに参加いただき、持続可能な暮しの拠点の姿はどのようなものか、そこではどのようなITS/ICTシステムやモビリティが求められるのか、ITS/ICTをどう活用すればよいのか、について専門家による講演を聞き、参加者同士のグループディスカッション、登壇者によるパネルディスカッション、を行って議論した。

 1) 日 時:2015年11月17日【火】13:00 ~ 17:30
 2) 会 場:北海道立道民活動センター(かでる2・7)
 3) 参加者:道内市町村でまちづくりや、都市・交通政策等に従事する担当者、道庁や国の関係者、
        北海道ITS推進フォーラムの会員企業、研究者
 4) 参加人数 : 北海道庁(8名)、道内の市町村(10名)、北海道開発局(15名)、
         地元企業、団体(6名)、登壇者(5名)、大学(1名)
 5) プログラム:配布プログラム

  第Ⅰ部 講演

         ①北海道の基礎圏域から世界水準の価値創造を
                  ( 北海道大学大学院工学研究院 教授   田村 亨 氏 )

         ②これからの基礎圏域計画のための交通・都市ビッグデータの活用方策
                  ( 室蘭工業大学大学院工学研究科 准教授 有村 幹治 氏 )

         ③遠隔地医療システムによる地域医療環境の充実
      ~交通ネットワーク整備によるストロー現象に備えて~
                  ( 新ひだか町立静内病院 院長 一般社団法人日高医師会 会長 小松 幹志 氏 )

         ④地方路線バス事業の活性化と利用者の安全対策
                  (株式会社ビーティス代表取締役 高野 元 氏 )

          ⑤ペダルをまわせば地域が見える
       ~交通弱者の移動と自転車タクシーの取り組み~
                 ( 特定非営利活動法人エコ・モビリティ サッポロ 代表理事 栗田 敬子 氏 )

     第Ⅱ部 ディスカッション ~だれもが移動しやすいまちづくりから始める地域の創生~

   ・進行、モデレータ
                 ( 北海道大学大学院工学研究院 教授  田村 亨 氏 )

         ・グループディスカッション(グループに分かれて、参加者同士で議論)

         ・登壇者への質疑、パネルディスカッション、全体ディスカッション
                   ( 登壇者や他の参加者との討議、質疑応答 )

2.講演概要

 地域の創生、活性化に向けて、街や交通のあるべき姿、それに対してIT/ITSやモビリティはどう進化させ、活用すれば良いのか、に関連し、北海道の開発計画、そのためのビッグデータの活用、交通ネットワーク整備に先立つ地域機能の向上、公共交通事業活性化、交通弱者モビリティ、等の視点で講師の方々に講演いただいた。

  田村氏からは、北海道の置かれた状況、国による国土のグランドデザインや、検討が進む次期北海道総合開発計画の方向性、小さな拠点や基礎圏域が世界に撃って出ていく必要性、等についてお話いただいた。

 有村氏からは、交通や移動のビッグデータの防災への活用、将来の土地利用やコンパクトシティ化検討への活用について具体的な分析事例を紹介いただき、ビッグデータの分析結果を都市計画や交通計画にするには、地域の意志や合意が必要である事についてもお話しいただいた。

 小松氏からは、新ひだか町立静内病院を中心としたバーチャル総合病院構想や、電子カルテをWeb化した事によって多くのメリットがあったこと等をお話いただいた。また、町立病院であっても前例にこだわらずに日高地域の生き残りのため、やれることは何でもやっているとのこと。

 高野氏からは、システム障害対策ソフトを専門とする会社が、BCP(Business Continuity Planning)の次のSCP(Society Continuity Planning)の対象分野として、社会性が高く全国に存在している路線バス事業分野に着目したこと、先進的な事業者と共に、観光&防災&バス利用増を目指すシステムを開発した事をご紹介いただいた。

 栗田氏からは、環境問題意識から8年前に起業したベロタクシー(自転車タクシー)が、現在年間7000人の利用があり、その半数は観光客ではなく札幌市内の交通弱者であることや、回想法に基づく認知症状改善効果をねらった「Odekakeりんたく」サービス等についてお話いただいた。

Lecture_Hokkaido

講演会の様子

Speakers_Hokkaido

田村氏      有村氏      小松氏      高野氏     栗田氏

3.グループ討議およびパネルディスカッション

 1) グループディスカッション、パネルディスカッション、全体ディスカッション
 参加者と登壇者が6つのグループに分かれて、討議を行なった。そこで出た意見や質問をもとに、北海道大学大学院の田村教授にモデレータとなっていただき、登壇者がパネラーとなるパネルディスカッションを行った。

 主な議論

  • 小さな拠点は、その定義が明確にあるのではなく地域毎に決めていく必要がある。
  • ベンチャーが開発したWeb版電子カルテシステムは道外からも引合いが来ている。
  • 保守的なバス会社も、導入したシステムで計測指標が手に入るようになると変わる。
  • ビッグデータの分析は最初に可視化して、分析者が勘も使って絞り込んでいく。
  • 道路の予算で地域活性化の施設やしくみ(医療システムやバス運行など)を支援できないものか。
  • 稚内の公道で低速走行用の車線を確保した事例がある。
  • 自転車道が整備されても、速度が遅く、車幅もあるベロタクシーは他の自転車の走行を塞ぐことになってしまう。
  • ベロタクシー車両は有償業務以外で公道走行できないので個人が買っても家族を乗せて走れない。
    Group discussion_Hokkaido

    グループディスカッション

 

 

 

panel discussion_Hokkaido

パネルディスカッション

4.最後に

  本交流会の講演や議論で得られた知見、本交流会で生まれた人の繋がりが、今後の地域のまちづくりや、それを支援するITS/ICT技術の活用に生かされ、参加各位の業務に役立てば幸いである。

《 参考資料紹介 》

 ・ITS地域交流会とは?(ITS Japanの地域ITS活動)