第7回ITS地域交流会 in 仙台2014(2014年12月5日)
【第7回 ITS地域交流会 in 仙台2014 開催報告】
~東北地方の復興まちづくりに、進化するITSの活用を考える~
2014年12月5日、仙台市において“ITS地域交流会 in 仙台”を開催した。
1.実施概要
日本の地方都市では移動や交通等の生活課題を解決しつつ、産業力を高めて活力のある持続可能なまちづくりが求められている。とりわけ、東日本大震災からの復興途上にある東北地域に於いては、交通だけでなく、住まいや仕事、コミュニティ、といった生活のすべての再構築が急務である。一方、情報通信技術の高度化や利用環境の普及により、ITSの技術は、地域それぞれが必要な機能を選択できるように進化してきている。
7回目となる今回は、「東北地方の復興まちづくりに、進化するITSの活用を考える」をテーマに、主として宮城県内の自治体の、産業振興、復興まちづくり、都市・交通政策、防災・情報政策の担当者、ITS/ICTによる街づくりに関心がある事業者、等に参加いただいて、有識者や先駆的取組みの講演を聞いて、登壇者と共にディスカッションを行った。
1) 日 時:2014年12月5日【金】13:10 ~ 16:30
2) 会 場:トラストシティカンファレンス・仙台
3) 参加者:主として宮城県内の自治体の、産業振興、復興まちづくり、都市・交通政策、
防災・情報政策の担当者、ITS/ICTによる街づくりに関心がある事業者
4) 参加人数 : 宮城県(8名)、宮城県内の市町村(1名)、大学・高専の教員(3名)
地域ITS推進団体(2名)、登壇者(5名)、地元企業(8名)
5) プログラム:配布プログラム
第Ⅰ部 講演
① 復興まちづくりと移動の課題
(モータージャーナリスト 両角 岳彦 氏 )
② 小型EVバスを活用した災害に強いまちづくり
(工藤電機 株式会社 取締役会長 工藤 治夫 氏)
③ コミュニティ・カーシェアリング ~高齢化社会に残すべき移動の仕組み~
(一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事 吉澤 武彦 氏)
④ 地域のコミュニティを活性化する移動サービス ~ナビチャリの活用事例~
(株式会社フォルテNEXT 取締役 葛西 純 氏)
第Ⅱ部 ディスカッション ~移動しやすく災害に強い安全なまちづくり~
・グループディスカッション(グループに分かれて、参加者同士で議論)
・登壇者への質疑、パネルディスカッション、全体ディスカッション
(登壇者や他の参加者との討議、質疑応答)
2.講演概要
東北地方が復興を進める中で、取材活動、ボランティア活動、交通まちづくり提言、移動サービス構築、をされている方々から、それぞれの取組みとその中から見えてきた地域の移動や交通の課題について講演していただいた。
両角氏からは、東日本大震災の被災地を巡る取材に基づいた、クルマと移動、コミュニティ再生、復興の課題、等についてお話しいただいた。復興事業が進むエリアでも、リアルな「移動」のための施策や資本投下が少ない実情や、今こそ「交通の専門家」が動き、日々の移動を考慮した住みやすいまちづくりを目指すタイミングであり、ITS は個人移動を最適化するツールになる、とのこと。
工藤氏からは、モノづくり、環境、地域社会が目指すべき姿、等についての具体的な取組みをお話しいただいた。
早くから(2003年~)電気自動車の実用化についての研究会やプロジェクトを産官学共同で立上げて、地域で環境にやさしいエネルギーを地産地消しながら地域の交通も支えていくEVバスによるまちづくり構想を発表。2014/10に復興庁の「企業連携プロジェクト支援事業」として「県内ものづくり中小企業の連携によるEVコンバージョン事業の立ち上げ」が採択され、EVコンバージョンタウンバスによる人・物・金・エネルギーが循環する地域づくりを進めている。
吉澤氏は、東日本大震災後石巻市で仮設住宅にカーシェアリング用車両を無償で貸し出す活動を推進。カーシェアリングによって仮設住宅内でコミュミティが生まれ、さらに送迎サービスや高齢者見守りサービス等がカーシェアリングの利用者自らの手で行われるようになった事例から、被災地以外でもコミュニティ形成のモデルになるような「地域のクルマを地域のために活用するしくみ」についてお話しされた。
葛西氏は、3G GPS tracker(通信機能付き小型GPS端末)を活用した各種ソリューション(オンデマンドバスやタクシーの呼び出し、バスロケーションシステム、除雪車両運行管理システム、河川水位監視システム、カープローブ情報の観光や防災への活用、高齢者見守り)や、骨伝導ヘッドホンと組み合わせてパーソナル・モビリティ・シェアシステムを目指す「ナビチャリ」サービスについてお話しされた。
3.グループ討議およびパネルディスカッション
1) グループディスカッション
参加者と登壇者が5つのグループに分かれて、講演内容や地域のトピックス、あるいは見えてきた課題、についてグループ毎に討議・意見交換を行い、結果を発表した。
主な議論
●個の移動のためのソフトとハードは地元側からニーズを発信して産業を興していく必要がある。
●海外のように公道で受け渡しができるカーシェアリングを行うには法改正が必要だが特区制度
を活用して実現できるのではないか。
●観光と福祉、平時と有事、地元の人と外部の人(観光客や訪問者)等、目的が異なっても同じ
システムやサービスが使える工夫が必要。
●政策目標の違いや予算の目的外使用と言わず、ユーザー目線で横断的に予算が使える必要
がある。
●中古車や廃車をEVコンバートし、それをカーシェアリングで活用すれば、被災地だけでなく過
疎化の地域にも活用できるのではないか。
●仙台地下鉄東西線が来年開業するとバス路線が見直され乗継ぎが発生し不便と思う人がいる。
乗り物同士の乗り場を物理的につなぐ事や、情報で繋ぐ乗換案内サービスの提供が重要になる。
●今は交通網の中心にはJRの大きな駅等があるが、今後はコンビニが小さい駅のような形で、
そこにバス停、レンタサイクル、EVカーシェアリング等を構築していくのが良いのでは
ないか。
2) パネルディスカッション、全体ディスカッション
これらの意見を受けて、東北大学 未来科学技術共同研究センター副センター長の鈴木高宏教授にモデレータとなっていただき、登壇者をパネラーとしたパネルディスカッションを行った。
主な議論
●中古車廃車をEV化してそれをカーシェアに適用して地域で回していくには行政の応援が必要。
●EVコンバージョンには整備業界の協力やその分野の人材育成が必要。
●完成車メーカーが次のクルマを考える時に、ユーザーの潜在的なニーズを東北地域から発信
していくと、世界中の過疎化高齢化が進む地域で使われるクルマが東北から生まれるかもしれ
ない。
●仙台地下鉄東西線の開通後は地域振興的側面でも、地下鉄駅までの移動の確保の側面でも、
東北大学でもEVコンバージョンしたバスを含めて検討している。
●乗継のために乗り物を情報でつないでいくしくみを東北大学だけでなく東北地域全体で考えて
いきたい。この場を起点に全国にネットワークを広げていきたい。
4.最後に
本交流会での議論や、本交流会で生まれた新しい人の繋がりが、今後の地域モビリティやまちづくりへのITS/ICT技術の活用等、参加各位の業務に役立てば幸いである。
《 参考資料紹介 》
・ITS地域交流会とは?(ITS Japanの地域ITS活動)