世界のITSと標準化活動
世界のITSと標準化活動
海外におけるITS の開発・実用化も日本と類似した経緯をたどっているが、各国の交通事情を反映して推進されている
<米国>
情報技術研究開発調整局が2004年に発表している”Grand Challenge”(日本の「IT新改革戦略」に相当)の中に、「安全・安心・高効率、高容量なマルチモード輸送システム」が重点的に取り上げられ、連邦運輸省が陸上交通予算法”SAFETEA-LU”(2005)として予算法案を成立させ、交通基盤整備及びITS 技術の研究開発を推進してきた。日本のインフラ協調安全運転支援システムに相当する”IntelliDrive”では、安全に加え、社会情勢の変化に対応し、交通情報の収集・活用など交通の円滑化に資するシステムとしても実証実験が進められ、2013年に実用化などの意思決定を行うとしている。
2010年で期限切れを迎えるSAFETEA-LUの後継法案が審議されるなか、連邦運輸省により2010年1月に”ITS Strategic Research Plan”(2010-2014)が発表されている。交通管制・物流・通関・海運・鉄道などを含むものであるが、無線通信を利用する道路交通のITSシステムの開発・実用化を加速することを重点にしている。
<欧州>
欧州委員会が2001年にまとめた白書”European Transport Policy for 2010″にて2000年時点で約4万人のEU内交通事故死者数を2010年までに半減させる目標を打ち出している。また、地域特性に応じたモビリティマネージメント、歩行者・自転車や公共交通への道路空間の再配分、交通施策における官民連携を柱とした、総合的な都市交通政策が各都市で急速に展開・実現されている。 これらは、欧州委員会のもとで”eSafety Initiative” “Intelligent Car Initiative” “i2010″などのプロジェクトとして推進されている。
研究開発は、1984年に始まった”Framework Programme”としてEU加盟国の共同研究の一部として推進され、第7次では、地球温暖化問題の高まりを受け「環境にやさしく、スマートで、安全性の高い欧州全域における交通システムの開発」が交通分野の目標に掲げられている。自動車自体に対しては、高齢者やハンディのある人を含むパーソナルモビリティを都市へ導入する検討がなされている。
<アジア太平洋地域>
自動車社会の成長レベルにばらつきがあるが、多くの国々で都市への人口集中と急激なモータリゼーションの進展により道路交通問題が深刻化している。交通事故の急増への対応や応分の地球温暖化対策が国際社会からも求められており、インフラ整備や啓発活動などの人対策が、経済成長のスピードに追い付かないのが実情である。
これらに対応するため、ITSに対する期待が高まっており、インフラ整備に合わせてITS導入も進められつつある。各地域のニーズを把握しながら導入していく必要があるため、普及の度合いも国・地域・都市によりばらつきはあるが、産官学協力により、ITS戦略の構築、安全対策の向上、公共交通の充実、ETC、交通情報提供の拡大等、積極的に導入されている。 こうした中、日本のアジアへの貢献を目的として、第2回ITS世界会議・横浜が終わった後、ITS Japanが事務局となり、アジア太平洋地域ITSフォーラムを組織し、現在、11カ国/地域の参加を得て実施されている。
各国の交通事情を反映しながら進められているITSでは、標準化に向けた活動もまた活発に行われている。国際標準化に向けた活動は、主に、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)、JTC1(合同専門家会議)、ITU(国際電気通信連合)などで進められており、なかでもISO TC204が中心的な役割を担っている。最近のITS標準化においては、ETC、DSRCで代表されるような電波に関係するシステムが現実化され、その国際標準化に向けた取り組みが進められている。特に、自律型システム、路車間/車車間協調システムなどの安全運転支援システムは日米欧の3極とも実用化フェーズに入っており、グローバル展開のためにも標準化が戦略的な課題となっている。