セカンド・ステージ -普及と社会還元加速-
ファーストステージの実用化・普及に係る残された課題に関し、産官学の関係者がこれまでの成果を評価し、セカンドステージの取り組みの方向性として、「安全・安心」「環境・効率」「快適・利便」を基本概念とする「ITS推進の指針」が、日本ITS推進会議により取りまとめられた。この指針が、2006年1月の「IT新改革戦略」に反映され、ITSは安全・環境・利便達成に貢献する技術として位置づけられ、「世界一安全な道路交通社会」を目指すインフラ協調安全運転支援の実用化プロジェクトが官民連携のもと進められている。
<ITS推進のセカンドステージを支える3つの柱>
1)安全・安心:自動車が日常生活に定着している中、車車間通信・路車間通信を用いたインフラ協調型を含む安全運転システムの開発・実用化が進められてきており、情報通信技術・自動車制御技術の進化と共に、信頼性・耐久性の高い交通安全対策のシステム構築が求められている。また、近年の交通事故の状況を見ると、高齢者が関係した事故が急増しており、高齢者等も安心して移動ができる社会を作る必要がある。
キーワード:DSSS、ITSスポット通信サービス、ASV、インフラ協調システム、ITS-Safety2010(大規模実証実験)
2)環境・効率:地球温暖化の主原因とされるCO2排出量の約2割は運輸部門が占め、その約9割が自動車から排出されている。また、 NO2、SPM(浮遊粒子状物質)等による大気汚染は特に大都市部等において深刻な状況にある。自動車単体のみならず、公共交通を含めた交通需要の適正化、道路交通管理の高度化による交通流・物流の効率化といったITSの活用により、環境にやさしい社会を目指す。
キーワード:CO2削減、物流効率化、社会還元加速PJ、モーダルシフト
3)快適・利便:最先端の情報通信技術を活用し、必要な情報を、いつでも、どこでもリアルタイムに享受できるユビキタスネットワーク環境を構築し、誰もが快適で意のままに移動できる社会の実現に貢献していく。こうした社会実現においては、地域社会の活性化や高齢化社会という視点からの検討も必要である。
キーワード:ナビゲーションシステム、ETC(料金自動収受システム)、ITSスポット通信サービス、モーダルシフト
政府の取り組みや官民協力のもと、シーズ志向で着手されたITSが、セカンドステージにおいて目的志向・ユーザ視点の取り組みに進展した。横浜のITS世界会議から約15年を経て、ITSは、道路交通分野のみならず広く移動交通分野全体へ影響を与え、IT活用による国民生活の向上と国民経済の活性化に貢献する新技術として、地域や産業分野に広がっている。