第4回ITS世界会議ベルリン1997
第4回ITS世界会議ベルリン1997が1997年10月21日(火)から24日(金)の4日間、ドイツのベルリンで開催されました。
今回のベルリン会議のテーマは ”Mobility for Everybody”です。欧州ではITSを乗用車、バス、トラックはもちろん、鉄道、水運、航空までを含めた統合された交通システムとして捉えようとしています。安全や環境を維持、向上させるために、ITSはその視野をロジステイック等を含めた、人や物の移動全てに拡大しようとしています。
本会議においては、ITSが実験段階から離陸し、リアルビジネスが始まりつつあるとの強い印象を受けました。近い将来、多彩なITSアプリケーションが展開されるものと期待されます。
日本からはITS関係五省庁、団体、企業、アカデミアから700名近くの方が会議に登録、参加されました。日本のITS施策、ITSビジネス開発、関連研究開発などについて多数の発表があり、ディスカッションに参加されました。
なお、次回ITS世界会議開催国である韓国からは約120名が参加し、来年のITS世界会議のPRに熱心に取り組んでいました。
開催概要
【会期】 1997年10月21日~24日
【会場】 ICC Berlin
【会議テーマ】 Mobility for Everybody
【参加国/地域】 43
【参加者】 5,000名
【会議登録者】 3,000名
【出展数】 189
【セッション数】 121
【論文数】 594
「開会式及びプレナリーラウンドテーブル」
オープニングセッションは地元のDiepgenベルリン市長とSodeikat世界会議組織委員長の歓迎の挨拶で始まり、続いてスウェーデン、ドイツ、ルクセンブルグ、韓国の各運輸担当大臣が挨拶されました。
日本からは運輸省・栢原技術総括審議官が日本政府代表としてスピーチされました。ITSモデル地区実験構想フィージビリティスタディ、アジアとの関係強化、日本のシステムアーキテクチャなど、日本の今後の取り組みを説明されました。
続いて、プレナリーラウンドテーブルが開催され、アジア太平洋地域からは中原VERTIS副会長(住友電工(株)特別技術顧問)とITS Australia McIntosh会長が参加されました。
全体として、「インターオペラビリティの向上」、「研究段階からビジネスチャンスへ」といったITSが夢から現実の世界に踏み込んだことが感じられる、具体的な議論が多くありました。また、この会議を機に、全欧での交通情報提供サービスのフレームワークを確立してビジネスを立ち上げようとする欧州側の強い熱意を感じました。
エクゼクティブセッション
ITSに関する市場、安全性の向上、サービス、官民との協調、鉄道及び商用車やロジスティックスとを視野に入れた取り組み等における発表が多く、内容も充実し、多彩でした。
日本からの登壇者は以下の通りです。(敬称略)
省庁
- 警察庁交通局・東川課長
- 通産省機械情報産業局・福田企画官
- 運輸省自動車交通局・中山課長
- 郵政省電気通信局・稲田課長
- 建設省道路局・城処課長
学界
- 東京大学大学院・吉本教授
- 慶應義塾大学理工学部・川嶋教授
産業界
- 東日本旅客鉄道(株)安全研究所・小林主幹研究員
- トヨタ自動車(株)・中川常務
- 日産自動車(株)・仲村取締役
- (株)本田技術研究所・畑中ECE
- (株)デンソー・加藤常務
- 松下通信工業(株)ITS事業開発センター・浮名所長
- 三菱電機(株)産業システム研究所・中堀所長
モデレータ
- 東京工科大学工学部・高羽教授
スペシャルセッション及びテクニカルセッション
「スペシャルセッション」では合計147のプレゼンテーションがありました。日本はASV、AHS、VICSセッションを主催し、多数の聴衆を集めました。またアジア太平洋地域ITSセミナーについてもスペシャルセッションが開催され、欧州から強い関心が示されました。
今回のスペシャルセッションの枠で、ERTICOが2017年における欧州でのITSビジョンを発表しました。事故時の緊急通報により生存率の15%向上、交通事故死亡者の50%減、旅行時間の25%削減、ETCなどの導入による年間旅行時間の40時間削減、公共交通優先施策実施による遅延時間の50% 削減、貨物輸送コストの25%削減、都市中心部における大気汚染の50%削減を目標とする内容で注目されました。
「テクニカルセッション」では合計594論文が発表されました。日本を含むアジア太平洋地域からの論文は166編でした。
展示会
合計189展示。全般的傾向としてはナビゲーションを中心とした情報提供関連製品が多く出品されていました。
又AHSに欠かせないミリ波レーダー使用の衝突警報装置なども出品されて、ITSがますます身近に、具体的になりつつあることが実感として伝わってきました。日本からは17団体・会社が展示会に出展し、多数の具体的なITS技術、製品が紹介されました。
今回は自動車だけでなく、バス、鉄道との連携にITS技術を使用した内容の出展もありインターモーダル輸送への具体的な今後の取り組み例として注目されました。
閉会式及びクロージングセッション
クロージングセッションでは、ITS世界会議のシンボルである”グローブ”(地球儀)がVERTIS越正毅副会長ら三極代表が見守る中、ドイツから韓国に手渡され、今回の会議を終了しました。
次回開催国の韓国がクロージングセッションで見事な演出で韓国の紹介を行い喝采を浴びました。